研究課題
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研究課題の紹介
重力波天文学
重力波の存在は1916年に予言されていましたが,その観測は非常に困難を極めます.そのため予言から初観測まで100年を費やしました.
日本や欧米でレーザー干渉計を用いた重力波望遠鏡が建設され,重力波の観測が行われています.重力波望遠鏡は空間の歪みを検出する装置です.空間が歪むというと,「何かとてつもない事が起こるのではないか?」と心配になるかもしれませんが,例えば,銀河系のハローで太陽質量の半分程度の質量を持つブラックホール同士が衝突して発生する重力波の振幅はh~10^-18程度で,これは東京-大阪間の距離を0.5mm縮めるだけです.この様に比較的大きな天体現象でさえ重力波による歪みは微小なものです.
重力波は物質との相互作用が非常に小さいため,光(電磁波)による観測に比べ,発生源の情報をより多く得ることが期待されます.
物理的には重力波の観測はニュートリノの観測と似た側面を持っていて,例えばカミオカンデは超新星爆発によるニュートリノの検出に成功して話題を呼びましたが,超新星爆発での重力波を捉えることができれば,超新星爆発のセントラルエンジンについて多くの情報が得られることが期待できます.
この他にも中性子星連星の衝突による重力波を観測することで,クォークについての情報が得られるかもしれないですし,実験室では観察しえない高重力下での物質の状態を知ることができ,素粒子物理学の発展に大きく寄与することでしょう.また,ブラックホールを直接観測する手段でもあります.
星形成
星形成過程の研究は理論的にも観測的にもかなり進展してきています。しかし、実際の星形成過程は様々な物理過程が絡み合った、非常に複雑な過程であり、個々の物理過程も、それぞれが完全に理解されているわけではありません。そのため、星形成過程における個々の基礎物理過程を十分理解する研究が必要です。 星形成過程において磁場は重要な役割を果たします。一般的な星間雲では磁場のエネルギーは自己重力エネルギーに匹敵するほどで、磁場と星間雲が十分に結合していれば、星間雲の収縮を妨げ得るし、角運動量の輸送や分子雲コアの構造形成にも重要な役割をはたしていることが予想されます。そこで当研究室では、星間物質中での磁場の振る舞いや、銀河磁場の起源についての研究を行っています。
銀河形成
宇宙物理学において残された最大の問題の一つとして 銀河形成があります。銀河は宇宙を構成する主要要素の一つであるにも 拘らず、その具体的な形成過程は明らかにされていません。現在考えられている銀河形成のシナリオは、まず、高熱の宇宙が空間の膨張によって冷され中性化し、ガスが重力収縮を始めます。ガス雲は、ある程度収縮するとより小さな塊に分裂し、それがさらに収縮することで星が形成されていきます。この様にしてできた星々は重力によって束縛され、今のような銀河が形成されると考えられています。当研究室では銀河形成・進化において重要な役割を果す星の形成率や質量関数などの、大局的な星形成を特徴づける量がどのように決定されるかを知るために、特に原始組成ガス中での星形成について研究しています。