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Next: 6. 今後の展望 Up: Numerical Relativity Previous: 4. 連星中性子星の合体の数値シミュレーション

5. 国外での数値相対論研究

連星中性子星の数値的研究は,欧米でも進められている。ひとつは,アインシュ タイン方程式を完全に解くのではなく,その一部を近似的に解くということが行 われている。これは,上述の3つのフェーズでいうと,(1)から(2)のフェーズの 問題である。米国のウィルソンたちの計算[10]で,連星系にある中性子星 は,単独の中性子星より不安定になりやすく,2つの星が合体する前に重力崩壊 してブラックホールになる,という結果が出された。別の方法を用いた計算 [11]ではこれと異る計算結果が出されており,大きな議論を呼んでいる。

また,上述のわれわれの計算では,簡単のため,初期条件として2つの中性子星 は球対称であると仮定したが,本当は正しくない。これに対して, フランスのグループは,この初期条件となるべき,自転している2つの中性子星 からなる一般相対論的な連星系の準平衡形状の計算方法を開発している[12]。

一方,ドイツと米国のグループは,連星ブラックホールの合体を中心としたシミュ レーション・コードの開発を精力的に行っている[13]。 ブラックホー ルの問題は,中性子星の問題とちがって,真空の時空構造の発展を取り扱うため, 流体の方程式を解く必要はないが,はじめから事象の特異点が存在している時空 を扱うため,特異点の回避の方法という別のやっかいな問題が含まれている。



Ken-ichi Oohara
1998-11-06