next up previous
Next: 3. 数値相対論 Up: Numerical Relativity Previous: 1. 計算物理学,数値天体物理学

2. 重力と一般相対論

太陽のような星や銀河の構造や進化を決めている最も重要な力は重力である。 普通の星や銀河の重力を記述する法則はニュートンの万有引力の法則であるが, 重力によって宇宙空間のガスがかたまり,様々な個性を持つ星や銀河がどのよう にしてできるのかということを知ることは実は簡単なことではない。 さらに,中性子星やブラックホールなどのような非常に強い重力は,ニュートン の万有引力の法則ではなく一般相対論によって取り扱わなければならない。 アインシュタインの一般相対論の検証は,水星の近日点移動,太陽の近くを通る光 の屈折やその到達時間の遅れなど,いくつかの観測事実によって示されてい る[2]。 さらに,PSR1913+16という連星パルサーの公転周期の変化から,重力波の発生が 間接的にではあるが証明されている。ちなみに,連星の近星点移動(これは水星 の近日点移動に対応している)や伴星による電波の伝わる時間の遅れは,太陽系 での同様の観測よりけた違いに大きなものが観測されており,その値は一般相対 論の予測と非常によく一致している[3]。 重力波とは,重力場の変動が波動となり, エネルギーを伝播させるものである。電場や磁場の変動により電磁波が発生 するのと同様のものと考えてよい。ニュートンの万有引力の法則では重力波が発 生することはなく,重力波の観測は相対論的な重力理論の決定的な証拠といって もよい。特に,これまでの一般相対論の検証は,太陽などが作る静的な重力場の 中での観測であったが,重力波は重力場の変動に起因するもので,その重要性は 非常に大きなものである。



Ken-ichi Oohara
1998-11-06