GaiaはESA(European Space Agency: ヨーロッパ宇宙機関)が2013年12月に打ち上げた位置天文観測機です。2014年7月から科学観測を開始し,2016年9月14日に最初のカタログを公開しました(Gaia DR1)。地球から見て太陽の反対側にあるラグランジュポイント(L2)において多くの天体の位置を非常に精密に観測することにより,天体の位置のみならず距離や運動の情報も得ることができます。
ESA Gaiaホームページ
天の川銀河の星を観測するGaia(想像図) ラグランジュポイント(L2)で観測するGaia
  • 主要目的
  •  全天の星の位置天文観測装置であるGaiaの最大の目的は、10億個以上の星を観測することにより私たちの銀河系(天の川銀河)の非常に精確な3次元地図を作成することです。
  • ミッション
  •  Gaiaは20等級 (肉眼でぎりぎり見ることのできる星のおよそ40万分の1の明るさ)までのほとんどの天体を5年間で約70回観測します。そして天体の位置、距離、運動、光度の変化を記録します。その結果、非常に多数の恒星の詳しい情報を得るだけではなく、新しい太陽系外惑星や褐色矮星などを数十万個も発見し、私たちの太陽系内に存在する小惑星などの小天体を数十万個観測することが期待されています。また約50万個の遠方のクエーサーを観測することにより、アインシュタインの一般相対性理論に対する新しい厳格なテストを行うこともできます。
  • 特徴
  •  Gaiaは、天の川銀河全域(および一部はそれより遠方)にある10億個以上の星に対して、その位置、運動、光度、表面温度、組成などを測定し、非常に精確な3次元地図を作成します。この非常に多数の星に対する観測結果は、天の川銀河の起源、構造および進化の歴史などの多くの重要な問題に取り組むために必要不可欠なデータを提供します。
     たとえば、Gaiaは、どの星が天の川銀河に昔「飲み込まれた」小銀河の星であったかを識別します。また、天の川銀河の恒星の大局的な運動を調べることにより、天の川銀河を構成要素の一つである暗黒物質(目に見えない物質)の分布を明らかにします。
     Gaiaは15等級(肉眼で見える限界の星のおよそ4000分の1の明るさ)より明るい天体に対しては24マイクロ秒角の精度でその位置を測定します。これは1000kmの距離で髪の毛の直径を測定することに匹敵する精度です。
     その結果、最も近い星に対しては、0.001% の誤差という、非常に正確な距離の測定ができます。天の川銀河の中心部(およそ3万光年の距離)の星に対しても、その距離を誤差20%程度の精度で測定できます。この位置と距離の決定精度は、何回も観測することにより最終的にはもっと向上します。
     Gaiaによってもたらされる膨大な天体の精密なカタログは、私たちの太陽系と天の川銀河の研究のみならず、私たちの宇宙全体の研究に対してもその基盤となりなります。
  • 観測方法
  •  Gaiaの心臓部には、2 つの光学望遠鏡があり、それによって集めた天体からの光を測定して星の位置や速度を測ると共に分光してスペクトルを調べるための科学測定機器が搭載されています。  5 年間のミッション期間中、ゆっくりとスピンしながら2 つの望遠鏡で天球全体の天体を観測します。観測装置は、各天体の位置を繰り返し測定し、天体の運動の変化も検出します。
  • Gaiaの旅
  •  Gaiaは2013年12月にフランス領ギアナのクールーにある欧州宇宙基地からソユーズSTB/Fregat-MT のロケットで打ち上げられました。
     打ち上げ後、ガイアは直径10mの「スカート」 を展開しました。これは、望遠鏡への日光などを遮り、温度を-100℃以下にするためのサンシェードとして働くと共に観測装置のための発電装置としても機能します。シールドの裏側には太陽電池パネルが設置されていて、常に太陽の方向を向いて発電を行うのです。
     Gaiaは打ち上げ後およそ1ヶ月をかけて、地球の軌道より150万km外側で太陽を周る現在の軌道に到達しました。この位置はラグランジュ点(L2)として知られる、地球と一緒に太陽の周りを運動できる特別な場所になっています。地球周回軌道では、地球の影に入ることによる温度変化を受けるし、地球自体の出す熱放射も観測の邪魔になります。L2においては太陽と同時に地球も「スカート」で隠すことができるため,地球からの影響が小さく、非常な高精度で天体の観測ができるのです。
  • 歴史
  •  Gaiaのルーツは、10万個以上の星を高精度で、そして200万個以上の星を低精度で観測しカタログを作ったESAのHIPPARCOS計画 (1989-1993 年)です。それからおよそ20年後にGaiaは打ち上げられ、10 億以上の星に対してHIPPARCOSより200倍以上高い精度で位置や動きを測定します。Gaiaは、HIPPARCOSカタログより1万倍も多くの星に対してカタログを作成するのです。
     Gaia計画は、ESAの基盤計画として2000年に承認されました。ヨーロッパ全体の共同計画です。「Gaia」という名前は元々はGlobal Astrometric Interferometer for Astrophysicsの頭文字「GAIA」から命名されました。これは当初は干渉計の光学技術を利用する計画だったことを反映しています。その後観測方法が変更されたため、頭文字としての意味はなくなりましたが、プロジェクトの継続性を示すため「Gaia」の名前が使われています。
  • Gaiaの体制
  •  宇宙探査機としてのGaiaはEuropean Space Operations Centre (ESOC, Darmstadt, Germany)から、3ヶ所の地上施設(Cebreros (Spain), Malargue (Argentina) and New Norcia (Australia))を通じてコントロールされています。科学的な面での操作はEuropean Space Astronomy Centre (ESAC, Villafranca, Spain)が担当しています。
     GaiaのData Processing and Analysis Consortium (DPAC)が得られた生データを解析し、カタログを作成して公開します。                     トップページへ