Gaia DR1は天の川銀河の恒星に対する空前の規模を誇るカタログです。しかし、Gaia DR1に限らず、観測データには必ず誤差が含まれているので、それを使うときには常に注意を払う必要があります。
ここでは2016年12月に日本の国立天文台で開催された
Gaia-JASMINE joint meetingの際のXavier Luri博士の講演に基づき注意点を簡単に解説します(Luri博士の承認を得ています)。
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- Xavier Luri博士(Barcelona大学)、Gaia DPAC Consortium meeting (Sitges, Catalonia, Spain, 2017)の会場にて撮影。
- Luri博士はGaiaの観測データを解析し、カタログとして公開するための作業を行っているGaia DPACの中心的メンバーです。
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- Gaia DR1のデータ用いた研究を行う上で最も注意するべきことはparallax(年周視差)の使い方です。
- Gaiaの最も重要な特徴は数多くの星に対してparallaxを測定から距離を決定するという点にあります。
- ただし、距離は測定値であるparallaxの逆数に比例するため、非常に注意して扱う必要があるのです。
- 上図はそれを模式的に表したものです。
- 左側の赤い線(縦軸に対応)は、parallaxの観測値を本当のparallaxで割った値の分布です。理想的にはこれらの星に対してはそのmode(最頻値)、median(中央値)、mean(平均値)はすべて1となり等しくなります(青線)。
- それに対して、下側の赤い線(横軸にに対応)は、個々の星に対してparallaxから距離を計算したものを本当の距離で割った値の分布です。その場合には、mode、median、meanはそれぞれ異なる値をとりますし、mean(平均)は1ではなくなります。また一般的に2乗平方根が無限大になったりします。
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よって個々の星の距離を出して、それを統計的に扱うのは避けるべきです。
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平均を出すなど、統計的に扱うときには直接の観測量であるparallaxを使うべきです。
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