MACHOs

宇宙には大量の暗黒物質(直接観測できない物質)が存在している。 中でも渦状銀河のハローには、その回転則の観測から、 直接観測される恒星やガスの総量の 10倍程度も暗黒物質が存在すると考えられている。 渦状銀河である我々の銀河系においても、 大質量のダークハローの存在が示唆されている。 この銀河のダークハローを構成する暗黒物質の 正体は依然として謎に包まれているが、その1候補として 考えられているのが、暗い星状天体MACHOs(MAssive Compact Halo Objects) である。MACHOsの候補としては褐色矮星、古い白色矮星、中性子星、 ブラックホール等があげられる。その他の暗黒物質の候補としては、 WIMPs(Weakly Interacting Massive Particles)に代表される 素粒子論的物質がある。

我々の銀河系のダークハローが主としてMACHOsによって 構成されているかどうかは、重力レンズ効果によって判定することが できる(Paczynski 1986)。 遠方の恒星の手前をMACHOが横切れば、MACHOが レンズの役割を果して背景の恒星が増光するのが観測される。 これをマイクロレンズ現象と呼ぶ。 この増光は光の波長にはよらない ため複数の波長で同時に観測し光度曲線が一致することを要請すれば、 マイクロレンズ効果による増光現象をより確実に識別できる。

しかしマイクロレンズによる増光が起きている確率は非常に低く、 百万分の1以下である。そこで百万個以上の 恒星を常に観測してその変光をモニターする必要がある。多数の星を同時に 観測するために、主として、大マゼラン星雲の中の星が観測対象とされている。 この大変な観測を行っているグループは日本とニュージーランドの共同 グループであるMOAをはじめ、複数存在する。 その中でもMACHOは最大のグループであり、現在までにかなりの数の重力レンズ 現象と考えられる増光現象を観測し、不充分ながら統計的評価も 行っている(Alcock et al. 1997)。 最初の2年間の観測データの解析の結果からは、 ダークハローの半分ほどはMACHOsで構成されていると彼らは考えている。 また、継続時間から推定された個々の質量は太陽質量の2分の1程度であり、 赤色矮星や白色矮星に対応する質量であるとしている。

我々は、このマイクロレンズ現象の観測が意味することについて検討を 行い、マイクロレンズ現象の観測によって、新しい事実を明らかにする ために、理論的な研究を進めている。


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