研究課題
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 数値相対論

 日本や欧米で,レーザー干渉計を用いた重力波観測装置が建設され、重力波の観測が現実のものとなろうとしています。重力波とは簡単に言うと空間の歪みが波として伝播してくるもので、重力波観測装置はこの空間の歪みを観測する装置です。
 空間が歪むというと、「何かとてつもない事が起るのではないか?」と心配になるかもしれませんが、例えば、銀河系のハローで太陽質量の半分程度の質量を持つブラックホール同士が衝突して発生する重力波でもh〜10^-18程度で、これは東京-大阪間の距離を 0.5mm縮めるだけです。この様に比較的大きな天体現象においてさえ、重力波による空間の歪みは微少なものです。そこで、重力波を観測するためには、あらかじめ、どの様な重力波がやってくるかを知っている必要があるのですが、ここで数値相対論が登場するわけです。
 重力波の問題を解くには、アインシュタイン方程式を解く必要があるのですが、この方程式は困ったことに、対称性の仮定なしに解析的に計算することが不可能で、なにかしらの近似を行なう必要があります。数値相対論では時空を離散化することでこれを実現しており、基本的には数値流体力学応用で計算されます。数値相対論が数値流体力学と大きく異なる点は、一般相対論では時空が物質の運動に影響されて変化するために座標をどのように取ったらいいのか、明かではないことです。しかし、数値相対論における手法は近年かなり整備されてきており、また、計算機の性能向上もあり、さまざまな物理現象について、計算できるようになってきています。
 本研究室では、とくに中性子星連星の衝突についての計算を行い、この現象による重力波の観測から、どの様な物理が見えてくるのかを研究しています。

 
 重力波天文学

 重力波の観測は、数値相対論のところでもふれた通り、大変難しいのですが、重力波は物質との相互作用が非常に小さいという性質をもっており、光による観測にくらべて、発生源の情報をより多く得られることが期待されます。物理的には、重力波の観測はニュートリノの観測と似た様な側面を持っていて、たとえば、カミオカンデは超新星爆発によるニュートリノの検出に成功して、話題を呼びましたが、超新星爆発での重力波を捕えることができれば、超新星爆発でのセントラルエンジンについて多くの情報が得られることが期待され、現在さわがれているガンマ線バーストの起源について、なにか分るかもしれません。
 この他にも中性子星連星の衝突による重力波を取らえることで、クォークについての情報が得られるかもしれないですし、実験室では観察しえない高重力下での物質の状態を知ることができ、素粒子学の発展にも大きく寄与することでしょう。また、ブラックホールを直接観測する手段でもあります。
 本研究室では、前述のように、特に中性子星連星からの重力波が、どのような物理を教えてくれるかを探るべく、より精度の高い数値相対論のコードを開発しています。

 
 星形成

 星形成過程の研究は理論的にも観測的にもかなり進展してきています。しかし、実際の星形成過程は様々な物理過程が絡み合った、非常に複雑な過程であり、個々の物理過程も、それぞれが完全に理解されているわけではありません。そのため、星形成過程における個々の基礎物理過程を十分理解する研究が必要です。
 星形成過程において磁場は重要な役割を果たします。一般的な星間雲では磁場のエネルギーは自己重力エネルギーに匹敵するほどで、磁場と星間雲が十分に結合していれば、星間雲の収縮を妨げ得るし、角運動量の輸送や分子雲コアの構造形成にも重要な役割をはたしていることが予想されます。
 そこで当研究室では、星間物質中での磁場の振る舞いや、銀河磁場の起源についての研究を行っています。

 銀河形成

 宇宙物理学において残された最大の問題の一つとして 銀河形成があります。銀河は宇宙を構成する主要要素の一つであるにも 拘らず、その具体的な形成過程は明らかにされていません。
 現在考えられている銀河形成のシナリオは、まず、高熱の宇宙が空間の膨張によって冷され中性化し、ガスが重力収縮を始めます。ガス雲は、ある程度収縮するとより小さな塊に分裂し、それがさらに収縮することで星が形成されていきます。この様にしてできた星々は重力によって束縛され、今のような銀河が形成されると考えられています。
 当研究室では銀河形成・進化において重要な役割を果す星の形成率や質量関数などの、大局的な星形成を特徴づける量がどのように決定されるかを知るために、特に原始組成ガス中での星形成について研究しています。